恋愛工学生ヒロのネトナンブログ

恋愛工学生。withを中心にネトナン活動を行なっております。シリーズ小説:もし非モテの大学生が藤沢数希の「ぼく愛」を読んだら

【小説】もし非モテの大学生が藤沢数希の「ぼく愛」を読んだら #6:体育会系

※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などは関係ありません。

 

「まずは街に繰り出すことから始めればいいですか?」

 

さすが元野球部という言葉が似合うほど、隆史は体育会系っぷりを見せる。

 

ヒロは隆史にコンサルティングすることを約束したが、あくまでLINEのメッセージと電話でのサポートだ。

 

「隆史くん、威勢がいいのはいいことだけど焦りすぎはよくないよ笑」

 

「コミットメントを高めるため」という理由も兼ねて、ヒロはコンサルティング費用として隆史に15,000円を請求した。

 

もちろん事前の説明はあったものの、大学生の隆史にとって15,000円はもちろん安くはない金額だった。

 

 

メジャーではないがチェーン店の居酒屋でバイトをする隆史の時給1,200円。

 

自宅から徒歩10分程度の最寄駅前である三軒茶屋に位置しているので、週に3日ほど朝方まで働いている。

 

深夜で割増されて、月給にして12万円以上は稼いでいる。

 

 

学費は奨学金を借りて支払っている。家賃はワンルームで7万円/月のぼろアパートに住み、両親からの仕送りはもらっていない。

 

典型的な貧乏学生とも言えないが、赤学に通う学生からすれば可処分所得は多いとは言えない。

 

 

「ストナンの前に、隆史くんはまずは基礎能力を身につけようか」

 

 

「ぼく愛」を読んだ興奮は治りきってはいなかったが、ガチガチの縦社会で育って来た隆史は従順にヒロに従った。

 

主人公の渡辺くんが永沢さんから教わった手順と異なった提案であっても「今以下」になることはありえないのだから。

 

 

ヒロの提案はこうだ。

 

モテを定義する「モテ=試行回数×ヒットレシオ」の公式を守った上で、ストナン以外でもこの数値を上げることができる。

 

恋愛工学は理想形だし目指していくべきものだけど、年齢=彼女なしの童貞ボーイがいきなり挑戦してもむしろ傷つくだけだ。

 

 

Twitterで女性とのアポの結果報告や恋愛工学に対する持論を展開を呟いていたヒロは、いつしか「相談に乗って欲しい」という相談をDMで受けることが多くなった。

 

その度に「非モテの本質」を突きつけられた。恋愛工学を頭で理解しているものの、実践できずに頭を悩ませる人があまりに多すぎたのだ。

 

 

 

本業でもコンサルをしていたヒロは、真摯に、丁寧に相談に乗った。何人も童貞卒業をプロデュースした。

 

はじめての彼女ができました、という報告を何人からも受けた。

 

いつしか恋愛コンサルとして、特に「0→1、1→10」をアドバイスするだけでお金をいただけるまでにコンサル力を身につけた。

 

 

「隆史くん、基礎体力をつけるために焦らず少しずつ前進しようか!」

 

 

 

 

「もちろん、ちゃんとセックスしながらね。」

 

つづく

 

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◆著者ヒロ
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◆藤沢数希所長の著書「ぼく愛」シリーズ 

ぼくは愛を証明しようと思う。

ぼくは愛を証明しようと思う。

 

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もし非モテの大学生が藤沢数希の「ぼく愛」を読んだら #5:弟子入り

※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などは関係ありません。


「ヒロさん、ぼく愛読み終わりました!」


本当は全てを読み終わっていなかったが、数ページを残しながらも隆史は治らぬ興奮を元にヒロへTwitterのDMを送った。


「隆史くん、お久しぶり。早速読んだんだ!早かったね!」


「ぼく愛」では主人公である渡辺くんが、永沢さんという恋愛工学を実践する指導者のもとで非モテからモテ男に変わっていく。

 

隆史は自分を渡辺くんに重ねて一ページ、また一ページと読み進めていった。

 

 

「ヒロさんは僕にとっての永沢さんということなんですね!」

 

隆史の興奮はまだ冷めてはいない。「ぼく愛」で学んだ「恋愛工学」をもとにヒロについていけば、念願の大学デビュー、童貞卒業を確信したからだ。

 

大学の学長?サークルの会長?バイトの店長?あらゆる肩書きなど、ヒロさんの前では何の価値も見出さないほどにヒロを崇めてるようになった。

 

 

「隆史くん、ちょっと焦りすぎかな笑。恋愛工学を身につけてモテるようになることはそう簡単ではないよ。現に、隆史くんまだ童貞でしょ?」

 

 

ヒロにそう言われた隆史は、落ち込むどころかなぜか「根拠のない自信」でみなぎっていた。

 

今まで(色々な意味で)溜め込んでいたものに着火している様子とも言える。

 

「恋愛工学」は藤沢所長の研究と、多くの恋愛戦士たちの実戦によって導き出された叡智によって生まれたものであり、常にレベルが高い実験と結果の報告によって進化し続けている。

 

モテを目指す男性にとって「恋愛工学」に記載されいている内容を実践できることは理想形である。

 

もちろん「ぼく愛」という1冊の本の中では"ストーリーとして"非モテがモテ男に変わっていく様子が描かれているが、彼女と付き合った経験がない&童貞男子がいきなり「クリタッチ」は流石にできない。

 

女性に話しかけようと思っただけで「地蔵」だ。

 

 

「確かにぼくは童貞です…。でも、そんな自分を変えるために赤学に来たんです!ヒロさんお願いします!ぼくを弟子にしてください!!!」

 

 

真面目な両親野本に育った、わずか数年前までは甲子園を目指していた野球青年が、自分の童貞を捨てるために恥を捨て(ネット上で)頭を下げてる。

 

非モテ」を経験している男性であれば隆史の気持ちが痛いほどわかるのではないか?ただ、非モテだったのはヒロだって同じことだった。

 

「自分を変えたい」という悪なき向上心。その根本にあるのは「セックスがしたい」という下心。

 

隆史の手前、後者は今は言葉にしなくてもいい。

 

 

 

「分かったよ^^これから一緒に頑張ろうね!」

 

こうして、隆史はヒロのもとへ弟子入りをすることになった。

 

二人の間には見えない「エア握手」がガッチリ交わされていた。

 

つづく

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◆著者ヒロ
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◆藤沢数希所長の著書「ぼく愛」シリーズ 

ぼくは愛を証明しようと思う。

ぼくは愛を証明しようと思う。

 

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もし非モテの大学生が藤沢数希の「ぼく愛」を読んだら #4:課題図書

※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などは関係ありません。


「DMありがとうございます。大学2年の五十嵐隆史と申します。」


隆史はヒロからDMを受けてから数千にもわたる過去ツイートを遡って読み返していた。

当事者は特定できないものの、明らかに女性と来たラブホテルの写真が定期的にアップロードされている。

「即」?「スト値」?これら何を指す単語なんだ?



隆史は好きな女子に送るが如く、自分の今までの非モテぶりを長々とヒロにDMした。

 

年齢=童貞であること、もてたくて赤学に入学したこと、結局彼女もできないまま今を迎えてしまっていることを。

 

「長いね笑」

 

DM送付後、間も無く来たヒロからの返信に隆史は何か悪いことをしたかのように少し「どきっ」とした。

 

しかし、その緊張は続いて送られて来たメッセージですぐに忘れ去られることとなった。

 

 

「モテることなんて簡単だよ。」

 

 

簡単?いやいやいや、簡単だったらこの歳まで彼女ができないわけがないじゃないか。

 

人は自分ができないことや、自覚している課題について他人から指摘されると最初は「否定」の感情から入ってしまうことがよくある。

 

そういう自分を認めたくないからだ。

 

隆史は厳しくも優しい両親の元、「文武両道」を掲げて真面目にで育って来た。

 

イヤラシイ言い方になるが、幼少時から何をやってもそこそこできるタイプだったのだ。

 

成績優秀で礼儀正しい野球部員。

 

「モテない」という事実以外に大きな壁にぶつかったことなどほとんどなかった。

 

 

「この本を一冊読むだけで隆史くんの世界が180度変わるよ」

 

 

そういって送られて来たURLを開くとAmazonのページへ飛んだ。

 

「ぼくは愛を証明しようと思う」という、夜景の中に高層ビルが並んでいる表紙の本だ。

 

文庫本が中古で514円から売られている。

 

学生でお金がないとは言え、514円でモテるようになるのであれば安いものだ。

 

騙されたつもりでも即購入だ。

 

 

「まずはその本を一度読んで見て、読み終わったらまたDMを送って来なよ^^」

 

 

本が届くまでの2日間、わずか牛丼の並盛り定食ぐらいの金額でこんな楽しみを買えるなんて思ってもいなかった。

 

そして「俺はモテるようになる!」という妄想だけが隆史の中で膨らんでいった。

 

本が届いたその日、隆史は大学をサボった。

 

学校で指定されて今まで読んで来たどんな課題図書よりも早く、そして血眼になって「ぼく愛」を読み終えた。

 

20歳の秋、こうして隆史は「恋愛工学」と出会ったのだ。

 

つづく

 

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ぼくは愛を証明しようと思う。

ぼくは愛を証明しようと思う。

 

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もし非モテの大学生が藤沢数希の「ぼく愛」を読んだら #3:邂逅

※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などは関係ありません。

 

「こんなはずじゃなかった…」

 

大学デビューを志した隆史だったが、結局2年生になっても彼女ができないままでいた。

 

周りの友人たちはカップルでの仲睦まじい様子をインスタグラムにアップしている。意味不明な#(ハッシュタグ)と共に。

 

その写真が取られた時間の前後どちらかに、若々しい二人のセックスが必ずされているであろう様子を見ると、何とも言葉にならない感情になる。

 

そうして隆史はスマホのブックマークにある「wikipedia」という名のフォルダに入ったサイトを開きティッシュを2、3枚手に取る。

 

 

気付いたら20歳になっていた。まだ童貞だ。

 

甲子園を目指していた頃の自分は本当に輝いていたが、今となっては普通の学生だ。おしゃれでモテるという「赤学」っぽさも全く発揮できていない。

 

「俺は何のために赤学に…」

 

野球、甲子園という一つの目標を失った隆史にとって、大学デビューをしてモテることが次の目標だったが、全く女の子から告白されることもなければ、そもそも友好関係さえも広がっていない。

 

サークルは硬式野球サークルに所属したが、各学年に女子マネージャーが1、2名いるだけで、可愛い子はその学年のイケメンと付き合っている。

 

サークルであっても大学まで野球を続けようと思っているやつはやはり実力がある奴が多い。

 

甲子園経験者だって普通にいるサークル内で、特別自分がちやほやされる理由はなかった。

 

 

「出会いがあるかもしれない」と思って始めた居酒屋のバイトだが、酔っ払った女の子からLINEのIDが書かれたメモを渡されたことなんて一度もない。

 

ましてや初めて1年も経たない若造が女性客に話しかけていたら店長に怒られる。

 

そもそも女性に流暢に話しかける経験も勇気もない。

 

 

意味不明にTwitterの検索バーに「モテたい」と打って見た。

 

明らかに胡散臭いアカウントがおそらく金で買ったであろうフォロワーを従えて名を連ねる。

 

そんな中、あるアカウントを見つけた。

 

アカウント名は「ヒロ@恋愛工学生」と書いてあり、フォロワー数は532。

 

こんなつぶやきをしていた。

 

「モテたいなら、環境を変える。付き合う人を変える。時間の使い方を変える。」

 

その日不発だった合コンの酔いがまだ残っていた。

 

思わずそのツイートに「いいね」し、フォローして見ることに。

 

すると、数分待たずともフォローバックが来た。

 

 

「フォローありがとうございます。withを軸にネトナン中心に活動しております、ヒロと言います。」

 

 

つづく

 

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ぼくは愛を証明しようと思う。

ぼくは愛を証明しようと思う。

 

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もし非モテの大学生が藤沢数希の「ぼく愛」を読んだら #2:思春期

※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などは関係ありません。

 

「ごめんなさい。部活があるので。」

 

豊知工業高校は男子校とは言え、愛知県では名門の野球部ということもあり他校の女子からも人気だった。

 

女子は「甲子園を出場する(目指す)彼氏」と付き合っている自分が可愛いだけだ。もしくは友達に自慢したいという理由で野球部員の連絡先を聞きたがる。

 

丸坊主で泥だらけで練習ばかりで遊ぶこともままらない野球部と付き合うメリットなんて他にない。

 

お世辞にも「イケメン」と呼ばれるほどの容姿を持ち合わせていなかった隆史でも、1度だけ部活が休みの日にカフェデートした女子から告白されたことがある。

 

隆史は「硬派がかっこいい」と思っていた。

 

甲子園を目指すと決めたら恋愛なんてしている暇はないと思っていた。

だから「気持ちには答えることができない」と断わざるを得なかった。

 

 

高校三年間、文武両道を貫き通して豊知工業高校を卒業した五十嵐隆史(いがらし たかし)だが、自身の童貞は卒業できないまま大学進学を迎えることとなった。

 

野球部を引退した隆史は、やっと羽が生えた思いで坊主だった髪型も変え、禁止されていた眉毛の手入れも欠かさず行うようにした。

 

今まで我慢していた反動が大きかった分、急にモテたくなってしまったのだ。

 

 

彼女が欲しい。セックスがしたい。

 

 

恋愛のブランクが空いているどころではなく、今まで隆史には彼女がいたことがない。

 

心は「思春期」真っ只中だった。隆史は溜まりに溜まっていた。

 

他校の女子からちやほやされていたために変なプライドまでを持ってしまい、自分とは身の丈に合わない「容姿レベルの高い女子」しか好きになれなくなっていた。

 

童貞のくせに。

 

同じ塾に通っていた清楚系女子に告白するものの、あっけなく振られる。

 

その時は「ごめんなさい。受験があるので。」と、あたかも以前自分が言っていたセリフで断られた。

 

その清楚系女子からすると、本当はすれ違う度に胸と太ももに突き刺さる隆史の視線がただただ気持ち悪かったのである。

 

振られたショックは大きいものの、とにかく「彼女が欲しい。セックスがしたい」気持ちは抑えることができなかった。

 

以前、一度告白してくれた女子はきっとまだ自分のことが好きだろう。そんな根拠のない自信を持って送ったLINEは未読スルーされた。

 

Googleで調べた方法でスタンプのプレゼントを送ってみようとしたが、それさえも叶わなかった。

 

ブロックされていたのだ。

 

世の女性というものは年齢にかかわらず冷酷だ。

 

もう甲子園を逃した野球部員に特別な興味を示さない。

 

女子の中では「見えない新しい猿山」が出来上がっているのだ。

 

その山での隆史のポジションは高くない。

 

 

「大学デビューしかない」

 

 

隆史が甲子園の次に目指したのはプロではなくモテだった。

 

つづく

 

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もし非モテの大学生が藤沢数希の「ぼく愛」を読んだら #1:上京

※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などは関係ありません。

 

「ここが赤学か。」

 

五十嵐隆史(いがらし たかし)が上京して来たのは都内の赤川学院大学(あかがわ学院大学:通称「あかがく」)に四月から入学するためだ。

 

東京での生活はもちろん、一人暮らしをスタートすることに期待で胸がいっぱいになる隆史は、その日受験以来に訪れた赤学の門をくぐった。

 

赤川学院大学は「高学歴」と呼ばれるほどの難関私大ではないもが、キャンパスは表参道に位置し、おしゃれなイメージが強い。

 

偏差値は57程度といったところだろうか?男女ともに人気の私大であるが特に女子の容姿レベルが高く、赤学のミスキャンに輝けば、倍率1,000倍と言われるキー局のアナウンサーになることでさえ容易だ。

 

 

将来、特にやりたいことがない隆史は”潰しが効くから”という理由で経済学部を専攻した。

 

一般的に経済学部や商学部は大学内でも偏差値が低いことが多く、一昔前には「パラ経(パラダイス経済)」「楽商学部(楽勝学部)」という言葉もあり、チャラチャラした人が多いというイメージを持たれがちだ。

 

愛知県出身の隆史の父は地元の信用金庫の支店長として働き、母は中学校で音楽の教師を務めている。

 

真面目な性格の両親の教育方針は、いわゆる文武両道であり「スポーツも勉強も頑張ろうね」と、時に厳しく時に優しく、大切に育てられた。

 

五十嵐家に「反抗期」という言葉は無縁というほど、隆史は両親の期待に背くことなく育った。

 

小学校から始めた野球では愛知県の強豪校にスカウトされるほどの実力を有し、創立150年を超える豊知工業高校に進学し甲子園を目指した。

 

 

豊知工業高校は男子校で、野球部に入部すると三年間は寮生活をすることになる。規則正しく同じ志を持った仲間とともに生活を送ることに隆史にとっては何の抵抗もなかった。

 

上下関係が厳しかったものの「真面目ないじられキャラ」として先輩からも可愛がられた。

 

高校最後の夏、惜しくも甲子園までは一歩手が届かなかったものの、外野手のレギュラーとして三番打者を勤め「愛知県ベスト4」の結果を残した。

 

学業の面でも、厳しい練習で有名な野球部に所属していながらも赤点を取ることは一度もなく、正に文武両道を貫き通した高校生活だった。

 

大学の体育会野球部からいくつかスカウトをもらったものの「野球は高校まで」と決めていた。

 

そこに明確な論理は存在しなかった。

 

両親も「一生懸命やりきった」と野球を辞めることや、「本人の好きなようにさせてあげたい」と明確な夢のために学部をい専攻しないことにも反対しなかった。

 

「特にやりたいことがない」と言って赤学経済学部へ進学した隆史だが、ただ一つだけ彼がどうしても成し遂げたいと、胸に秘めている思いがあった。

 

 

 

「女の子からモテたい」

 

 

 

そう、隆史は「年齢=彼女なし」の童貞だったのだ。

 

 

つづく



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◆藤沢数希所長の著書「ぼく愛」シリーズ 

ぼくは愛を証明しようと思う。

ぼくは愛を証明しようと思う。

 

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