もし非モテの大学生が藤沢数希の「ぼく愛」を読んだら #5:弟子入り
「ヒロさん、ぼく愛読み終わりました!」
本当は全てを読み終わっていなかったが、数ページを残しながらも隆史は治らぬ興奮を元にヒロへTwitterのDMを送った。
「隆史くん、お久しぶり。早速読んだんだ!早かったね!」
「ぼく愛」では主人公である渡辺くんが、永沢さんという恋愛工学を実践する指導者のもとで非モテからモテ男に変わっていく。
隆史は自分を渡辺くんに重ねて一ページ、また一ページと読み進めていった。
「ヒロさんは僕にとっての永沢さんということなんですね!」
隆史の興奮はまだ冷めてはいない。「ぼく愛」で学んだ「恋愛工学」をもとにヒロについていけば、念願の大学デビュー、童貞卒業を確信したからだ。
大学の学長?サークルの会長?バイトの店長?あらゆる肩書きなど、ヒロさんの前では何の価値も見出さないほどにヒロを崇めてるようになった。
「隆史くん、ちょっと焦りすぎかな笑。恋愛工学を身につけてモテるようになることはそう簡単ではないよ。現に、隆史くんまだ童貞でしょ?」
ヒロにそう言われた隆史は、落ち込むどころかなぜか「根拠のない自信」でみなぎっていた。
今まで(色々な意味で)溜め込んでいたものに着火している様子とも言える。
「恋愛工学」は藤沢所長の研究と、多くの恋愛戦士たちの実戦によって導き出された叡智によって生まれたものであり、常にレベルが高い実験と結果の報告によって進化し続けている。
モテを目指す男性にとって「恋愛工学」に記載されいている内容を実践できることは理想形である。
もちろん「ぼく愛」という1冊の本の中では"ストーリーとして"非モテがモテ男に変わっていく様子が描かれているが、彼女と付き合った経験がない&童貞男子がいきなり「クリタッチ」は流石にできない。
女性に話しかけようと思っただけで「地蔵」だ。
「確かにぼくは童貞です…。でも、そんな自分を変えるために赤学に来たんです!ヒロさんお願いします!ぼくを弟子にしてください!!!」
真面目な両親野本に育った、わずか数年前までは甲子園を目指していた野球青年が、自分の童貞を捨てるために恥を捨て(ネット上で)頭を下げてる。
「非モテ」を経験している男性であれば隆史の気持ちが痛いほどわかるのではないか?ただ、非モテだったのはヒロだって同じことだった。
「自分を変えたい」という悪なき向上心。その根本にあるのは「セックスがしたい」という下心。
隆史の手前、後者は今は言葉にしなくてもいい。
「分かったよ^^これから一緒に頑張ろうね!」
こうして、隆史はヒロのもとへ弟子入りをすることになった。
二人の間には見えない「エア握手」がガッチリ交わされていた。
つづく
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◆著者ヒロ
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◆藤沢数希所長の著書「ぼく愛」シリーズ
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